長年、アパレルの企画やデザインにかかわる仕事に携わってきました。
その過程で多く目にしてきたのは、機械化・規格化された工業製品としてのアパレルや、
大規模かつ最先端に整備された海外の工場などでした。
グローバルな企業によって資本投下された機械を使って生み出される製品は、見た目も
美しく価格も低く抑えられ、消費者の方々が取り扱うのも容易で便利です。
これらの製品は、人類の長い歴史の中で育まれてきた、手作りのものとは対極にあると
私は思います。
私は、近代的な工業製品を否定するつもりはありません。それらは技術を追求した
人間の努力の賜物ですし、スピード感や均等な品質、値ごろ感といった規格化製品
ならではの特性は、忙しい現代人の生活にマッチしていると思っています。
ただその片隅に、昔ながらの規模や手法で作られる家内工業の製品や、生活に苦しむ
女性の自立を助けようと活動する団体の、素朴な手作りの商品もひっそりと存在していて、
それらはこんな時代だからこそ、人々のこころを少し和ませる役割を果たして
くれるかもしれません。そんな役目を担うシステムのひとつが、2005年から私が
CARINOのブランド名で商品を作っている「フェアトレード」です。
フェアトレードとは、直訳すると「公正な取引」という意味ですが、私は途上国や
第三世界の国々の伝統的な手工業や、女性の生活の自立を支援するシステムの一つと
捉えています。
途上国や第三世界の多くの国々では女性が軽くあしらわれる傾向があり、さらに現金収入
を得る全うな仕事が不足しています。また教育を受ける機会に恵まれていない生産者らは、
自分たちが作った製品を販売する方法、販路などについての知識が不足していたり、
仲買人の囲い込み等によって、不当な賃金での労働を強制的に課せられる現状が多々
あるようです。
このような現状を改善するため、フェアトレード(公正な取引)の活動を通じて
生産者自身の手から私たちが商品を適正に購入して販売し、その先の販路をさらに拡充する
ことを通じて、生産者の側も正当な商取引に対する理解が深まっていくのではないか、
と思います。
自分たちが作ったものが正当に評価され、適正な価格で取引されるようになると、
生産者さんのやる気が喚起されます。それが生活の自立や、向上につなげることができたら
いいと思っています。
フェアトレードのシステムは、生産者の収入の安定と雇用の創出に貢献し得る、という
側面だけではなく、環境への負荷を軽減し、固有の文化を伝達するという可能性も持っています。
フェアトレードで扱われる商品は、バナナ。コーヒーなどの農産物から雑貨・アパレル製品に
至るまで、大量生産・大量消費を前提とした画一的なものづくりとは一線を画す手工業の製品
であったり、化学物質や薬品を使用しない生産工程であったりするからです。それはまた、
生産者の地元地域の文化を他の国や地域にに広める(知らしめる)機会もまた創出する、
ということではないかと思っています。
●CARINO(カリーノ)について
2005年設立。
オリジナルのフェアトレード商品の企画・販売・卸事業を開始。
全国の小売店(フェアトレード専門店、洋品店、雑貨店など)への卸売をはじめ、
東武百貨店、東急百貨店、小田急百貨店、京王百貨店、高島屋、三越、伊勢丹、アトレ、丸井、
グランディオなど商業施設で催事出店を行う。
2013年8月、東京都中央区銀座のショッピングセンター「銀座ファイブ」に直営店「carino」
を開店。
実店舗販売とネット販売、および卸売業務を現在も行っています。
インド、ペルー、モンゴルでフェアトレード(現地生産者を支援する公正貿易)やサスティナブルな
生産を意識した製品作りを行い、株式会社ヨーガンレール様、株式会社ジュン様、
株式会社サンエーインターナショナルヴィヴィアンタム事業部)様、
株式会社ユナイテッドアローズ様など、アパレル各社のOEM生産も請け負っています。